【2006.11.13 ワインアドバイザーへの道 3】
さてそんな風にして、ワインの勉強を始めたわけだけれど、最初に打ちのめされたのは、メルシャンの通信教育、ワインコムのテキストだった。 最初の「基礎的」な部分に関しては、ふんふんと、それまで読んでいた色々な本の延長という形ですんなりと進んだのだが、後半、産地ごとのワインの知識になって、私はほとんどコテンパンな状態だった。 ボルドーの、いわゆる格付けシャトーである。ブルゴーニュの村名やクリュである。 サントリーのカタログでくらいしか名前を聞いたことのないそれらが「『最低』でも覚えるべきもの」として、ずらずらっと並んであるのを見たときには、冗談ではなく本当にクラッとした。 カタカナの羅列が苦手で、世界史ではなく地理を選択した人間である。 「大体、こんなの、普通の人が飲むんかい!?」 心の中で叫びつつも、覚えないといけないことに変わりはない。 それに「ワインアドバイザー」と名乗るからには「普通じゃない人」にも対応出来てなんぼである。 かくして、実物を飲んだことも見たこともない、下を噛みそうなシャトーやクリュの名前を、必死で覚えていく毎日が始まったのだった。 そしてもちろん、それを覚えたら終わりではない。そんなの、ほんの数ページに過ぎず、その先には、フランスのその他の地区のAOCが、そしてイタリアが、ドイツが、ニューワールドのワインが……と、延々と続いているのだ。 聞いた事のない地名。聞いた事のないブドウ品種。乱数組み合わせのごとく、それらに加えて赤白ロゼの種類。 幸いにして、当時の私の通勤は、JRを使って、一時間程度かかっていた。かくして、単語帳にこれらの情報を書き込み(片面にシャトー名やワイン名、裏面に読み方と等級、地区や品種など)、座席に座れたらそれをめくるという日々が始まったのだった。
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