【2006.11.3 お酒との出会い 5 社会人編 3】
こうして店舗に戻った私は、その二年半後、再びまた、バイヤーの職に就くことになる。こうやって自分の社会人経験を振り返るたびに思うのだけれど、本当に短い間に、右と左を行ったり来たり、というのが私の職歴だということだ。 とは言え、今回のこのバイヤー職は、すでに一回店舗でかなりの経験をした後のことで、前回に菓子のバイヤーの経験をしたこともあるし、またパートナーにも恵まれて、四苦八苦しつつも、今思い出してもかなり「やりがい」を持って仕事をしていたと思う。 もちろん、お酒への執着を捨てたわけではなくて、今度のバイヤー職の職務の中には「酒売り場」も入っていたので、私にとっては、一歩の前進でもあった。 お菓子や、食品など、やらなければいけない仕事は山のようにある。その中でお酒の比率と言うのは一割にも満たなかった。でも、それでも実際に商談をしたり、新商品を紹介してもらったり、あるいは他の店を見に行ったり、というのはそれまでの「店の菓子売り場担当」とは雲泥の差だった。 また、バイヤーに着任して半年ほどの頃だと思うけれど、今の私にとって語らないわけには行かない一つの出来事があった。 それは私の長年勤務した店舗の、当時の食品の責任者の方の言葉だった。 「ワインアドバイザーを取れたら、店に呼び戻してやるよ」 当時、ちょうどワインがブームになりかけていた頃だった。その人は私がずっと「お酒をやりたい」と言っているのを知っていた。その上での言葉。 まだ、ワインアドバイザーという名前は知っていても、どんな仕事なのか、どんな試験なのか、どんな資格なのか、全く知らなかった。ネットもようやく「そんなものが世の中にあるらしい」と知った頃のこと。今のように情報があふれているわけではなかった。 「え、……本当ですね!?」 けれど、単純にも、その一言で本気になってしまったのである。バイヤーの仕事がいやだったわけではない。というよりもむしろ、それなりに楽しんでやっていた部分はあったのだが、店の酒担当者という立場の魅力にはかなわなかった。 そしてそこから、ワインアドバイザー資格取得に向けての勉強が始まったのだった。
Essay Topへ