【2006.10.27 お酒との出会い3 社会人編 1】
社会人になって、最初の配属先は菓子だった。 菓子と言っても売り場ではなくて、いわゆる「本部」という所で、女性が食品の、それも本部勤務というのは、会社のその事業部が始まって以来初のことだった。 とは言え、まったく何の理由もなく、私が大抜擢されたわけではないし、私だけだったわけでもない。当時のそこの偉い人が「食品にも女性の感性を」ということで、大卒女子4名が食品の配属になった、その中にいただけだ。 その4名が選ばれた基準も簡単。「食品でも良い」と面接で言った4名、というそれだけのこと。 私は配属希望で「酒」と書いていたので、かなり人事の目に留まったらしい。「酒は大卒新入社員を入れられる環境に現在はないから、菓子で」ということを言われた覚えがある。 希望は酒だったとは言え、そう簡単に通るわけもないと思っていたし、むしろここで菓子の配属になったことが、私の社会人のスタートとしては、かなりプラスになったことは間違いない。 社会人としてはもとより、流通人としてもまったくの素人(当たり前だけど)だった私に、基礎から、本当にスピリチュアルな部分まで、色んな方が色んな形で教えてくれた。あの時期は私にとっては本当にきつかったけど、今の私があるのは、あの時期があったからだと思っている。 そして、翌年、新店のオープンで菓子を特化した売り場を作る機会に立ち会えたこと。人の情熱が「何かを生み出す」瞬間に立ち会えたのだと、今でも思う。 当時の上司たちの熱意、というものは、今考えてもやはり「かなりのもの」だった。 バイヤーをやっていた時代に、取引先に得意がって言っていたセリフがある。「最後に人を動かすのは情熱だよ」 ……恥ずかしいセリフだけれど、――だからもう、言えないような気がするけれど――それは一つの真実だと思っている。 そしてまた、「酒志望」の女性新入社員は、それなりに面白がってもらえていたのだと思う。その中で忘れられないのは、お酒のバイヤーから「日向木挽」を貰ったことだ。サンプルで来たのだが、それは入れ物からして変わっていて、それを眺めていたら「あげる」と言ってもらったのだった。 焼酎はまだ、ブームも何も来ていなかった。私自身、乙類焼酎は飲んだことがなかった。初めてのその飲み物は、ちょっと変わった陶器の徳利に入っていた。 その徳利は、何度かの引越しのドタバタで消えてしまったけれど、地方の文化というものを重視することを何度も教えられていた私には、酒にも間違いなくそういうものがあるんだな、と再確認する機会になったのだと思う。
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