【2006.10.22 お酒との出会い 2】
1で書いた「お酒の記憶」以外にも、大学時代にはもう二つ、印象的な出来事がある。それを紹介しようと思う。 一つは、プレゼントにお酒を貰う機会が多かった、ということだ。帰ったら、ドアの入り口に掛けてあったこともあるし、ホワイトデーにも貰ったりした。社会人になってからは、お酒好きは周りの人間は皆知っていたし、「プレゼントにお酒を」という行為自体もそこまで特殊ではなくなっていたが、学生時代にもらったこれらのお酒は、本当にうれしかった。 お酒は、飲んで酔っていい気持ちになるだけではなくて、一つの「シーン」を演出するにも十分力のあることを私に知らせてくれた。 そしてもう一つは、アルバイトの経験である。 私は大学に入ってすぐから、本当に卒業する間際まで、大衆割烹なわのれん、というお店で働いていた。ここでは本当に色々なことを教わった。 それこそ、お酒のことだけでなく、料理のことも、接客のことも、である。 ボジョレーヌーヴォーというものを初めて知ったのもここだったし、日本酒にも生酒や吟醸といった種類がある、というのを教えてもらったのもここだった。 で、そのバイトをしていたときに、お客様に言われたことがある。 「きみ、学生さん? 専攻は何かね」 結構年配の男性のお客さまだった。 「社会学、です」 説明しないと分かってもらえないかな、もし聞かれたらどう答えよう、とそう思った私の心とは裏腹に、そのお客様は言った。 「そうか、社会学か。そりゃ、いいところでバイトしているね」 一瞬、意味の分からなかった私に、そのお客様は続けた。 「人の行動を見るには、こういうところは一番いいよ。君、ここの事を卒論にしなさい」 今思えば、少し酔っておられたのかも知れない。その後に「酔っ払いの行動社会学だ、どうだ」などと言っておられたから。 でも、そのお客様の言っていることは、それなりにもっともで、それ以降、私は「お酒」「飲む」ということを、単独ではなく、たとえば「行動」の中で、あるいは「食事」の中で、あるいは「コミュニケーション」の中で、と言う風に多方面から、いささか注意してみるようになったことは事実である。 私が「社会学」という学問に惹かれたのは、その懐の広さゆえだった。そして、「お酒」と言うものに惹かれるのも、その懐の広さゆえかも知れない、とこの話を思い出すたびに考える。
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