【2006.10.17 お酒との出会い】
最初にお酒というものを覚えたのは、今となってはもう時効だと願いたいけれど、中学生の時だった。 当時の私は、いわゆる大人になりたい盛りで、しかも色々と複雑な内面や外面があったため、ぐれる直前だったのだけれど(いや、人によっては充分ぐれていたと言われるかもしれない)、とりあえずそんな勇気もなくて、家でぐだぐだしていた。で、親の留守中に、隠してあった梅酒をこっそりとタッパーウェアなんかに隠して、自室に持ち帰り、夜な夜な氷で薄めては飲んでいた。(夜な夜な、は言いすぎ) 今となっては親が知っていたのかどうなのか、それはもう分からないし、今親に聞けば「知っていたに決まっているだろう」と言われることも分かっているので、あえて聞こうとは思わないけれど、それが最初のお酒体験だった。 その後の私とお酒のつながりの中で、一番印象的なのは、やはり大学生になって、親元を離れてからのことだった。 一つは大学祭。そうしてもう一つは、クラスメイトの男子。 大学祭はいわゆる「酒の洗礼」というヤツである。浴びるように飲む、という経験はそれが初めてだった。イマドキの大学生も、ああいう風にお酒を飲むことなどあるのだろうか、とふと思ったりする。 そしてもう一つのクラスメイトの件。誓って言っておくが、「そういう関係」ではない。本当にただのクラスメイトで、でもだからこそ、印象的だった。 何人かで、その男子の家で飲んでいたとき、彼のベッドの枕元には赤ワインがあった。 当時はまだ、お酒を飲み始めて何も分からないころ。その赤ワインは、当然その場の皆の注目を集めた。 「夜寝る前に、ちょっとだけ飲むんだ。結構いいよ」 と彼は言った。 実は彼は当時、親戚の家に下宿していたのが一人暮らしをはじめたばかりの頃だった。その親戚の家が酒屋だったため、そういうものが普通に部屋にあったのだと思う。 けれど、そういう事情を差し引いても、その赤ワインが枕元にある光景は、かなりインパクトがあった。 当時の私たちは、飲むと言えばビールか日本酒(これは宴席での話)、そして当時流行っていた初代の「メルシャンピーチツリーフィズ」などの甘いお酒だった。 そこに、赤ワイン。 銘柄を覚えていないのが残念なのだけれど(といっても、当時の私では、ラベルを見ても、どれが銘柄でどれが名前なのかも分からないだろうけれど)、裏ラベルにはっきりと「ミディアムボディ」と書いてあって、甘口でないのだ、ということは分かった。 それをきっかけ、というわけではない。(すでにその頃、かなり色々なお酒を飲んでいた覚えはある) ただ、それは、今でもこうやって思い出してこんな文章に書くくらいには、私の中で「お酒」というものを形作っているということは間違いない出来事だった。
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